【江差線廃止問題考察 ③-2】 続・江差線の維持あるいは再生について・・・いまさらですがこんな方法があったのでは?
2018/06/10
前回③-1では、江差線再生案として、LRT車輌を新製、廃止された函館市電、五稜郭駅前ーガス会社前ー函館駅前(-魚市場通)を復活させ乗客を江差線に誘致してみようということでした。
しかし、その肝心のLRTってどんな車両?というところが宿題として残されておりました。
それは、LRTが「挑戦2」と密着に関係しているので一緒に皆様と考えて行くのがいいだろうと、この場に持ち越した次第です。
【挑戦その2】「吉堀ー神明間に長大トンネルを掘ったら?」
・・・もうこの辺は妄想です・・・
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吉堀ー神明間に長大トンネルを掘ったら?
<図7・「分水嶺標高図」>
<図8・「拡大図と長大トンネル図」>
江差線は大正3(1913)年上磯まで(五稜郭から8.8km)、昭和5(1930)年木古内まで(同37.8km)、昭和10(1935)年湯の岱まで(同59.2km)、翌年昭和11年江差まで(同79.9km)全通しております(☆1)。
しかし以後、線形改良もなく現在に至っており、特に木古内から分岐後、吉堀ー神明間には分水嶺が存在、駅間距離は13.2kmと江差線内最長で
(2位が津軽海峡線に改良されてしまいましたが「茂辺地・上磯間8.8km」です(☆2)、所要時間にも影響が出ているようです。
そこで、旗には、その地点の標高を書き入れてみました。少しずれただけで、ずいぶん変わりますので、話半分でご覧下さい。
特に木古内方からサミット(赤△、163mの旗)にのぼりつめていくと、最後の300mは98‰と信じられない値が出てしまいました。
それはさておき、木古内から江差に向かうディーゼル車の平均的スピード(表定速度)は木古内ー神明間18.6kmを所要31分(=36.0km/hr)、神明ー江差間24.5kmを所要37分(=39.2km/hr)でありました(☆2)。
いかにも非力なディーゼルエンジン車を使っているという印象は免れません。
そのほかのこの線区の勾配の急峻さを示す値としては、吉堀駅からサミットまでの約8600mの平均勾配は約16‰と推測されました。
これは複線化を含めた線路改良される旧・千歳線(改良前は苗穂から分岐)に匹敵する劣悪な線路条件で(千歳線は最急こう配15.2‰、10‰以上の勾配が上野幌ー北広島間の連続9.5kmの65%=6.2km)、改良後は最急勾配は10‰未満に抑えられました(☆3)。
改良前は例えば、昭和36(1961)年10月号時刻表によると、札幌発函館行き臨時急行「石狩」は、たかだか7輌編成でしたが、多客期で1輌でも増結車があると札幌ー苫小牧間の速度を維持するために、C57重連で運転されており、当時の関係者の方々のご苦労がしのばれました(☆4)。
長大トンネル開削案
さて、話を江差線に戻しますが、ここ分水嶺に長大トンネルを開削したとしましょう。
「1案」は標高100m以上の高さを走らなくさせるコース、それでも距離は2700mもあります。
トンネルの出口から吉堀まで6.4km、入口からは9.1km、標高差は100-26=74mとなり、平均勾配は74/9100x1000=8.1‰。
「2案」は分水嶺前後の複雑な急曲線をショートカットしようとするもので、距離は3600m。トンネルの出口から吉堀までは「1案」と同じ6.4km、入口からは10.0km。最大標高は江差方のトンネル入口で85mです。標高差は85-26=59mとなり、平均勾配は59/10000x1000=5.9‰。
最後の「3案」は分水嶺ごと抜いてしまうまさに理想の形のトンネルですが、距離は4600m、出口は吉堀駅まで5.9km、入口からは10.5km。標高差は先ほどと同じ59mとなり、平均勾配は59/10500x1000=5.6‰。
どうやら「3案」は工期が長引き、技術的にも大変そうですが、数字的には「2案」と大差ありません。
しかし、トンネル長さ、勾配緩和などバランスが取れているのは「1案」ではないでしょうか。サミットの163m地点を通らないというのがやはり魅力かと思われます。
一方の神明側からですと、神明―サミット間距離は5300m、標高差 163-62=101mなので、平均勾配は19.1‰。
「1案」のトンネルを作った場合、神明ーサミット近傍の距離を5300m、標高差を100-62=38mと仮定。平均勾配は7.2‰と分水嶺前後の勾配緩和は大変良好となりました。
まー、一口にトンネルと申しましても、時間も金もかかる。人手はいる。こんな土壇場になってするようなお話ではないのかもしれません。
では、いっそのこと、①-3でご紹介した、江差に行くなら、函館―渡島大野(将来の新幹線「新函館駅」)-厚沢部ー江差ー上ノ国と廻るバスコースを鉄道にいただきましょう。
その代り、旧・江差線敷地をバス路線に差し上げますから。
・・・と思ったのですが、江差線の分水嶺は北上しますと、「中山峠 ― 三角山・設計山 ― 台場山などの重畳たる山並に姿を変え、現在の地形よりかえって不利になりそうです。
道道5号線での「北斗市・大野町・台場山:15.3‰(19.7km)」、「台場山・三角山:30‰(8.5km)」、「三角山・中山峠:20.2‰(5.3km)」「中山峠・オートキャンプ場:34.2‰(7.6km)」などと、どうやら函館バスさんは峰の尾根伝いの道を走っているらしく、自動車より勾配に弱い鉄道車輌の出る幕ではありませんでした。
<図1>「厚沢部廻り道道」の道路こう配などご確認ください(再掲)
なお、北廻り鉄道の終点を上ノ国にしましたのは、木古内以北で江差・上ノ国の輸送断面が一番大きいからです。
この話の締めくくりとして、函館ー江差間、どんな車両を使いましょうかという宿題が残っており、それは一部、市電路線に乗り入れてみては?と③-1で私が書かせていただきました。
では動力と、出力と、車体の大きさは?
*まず、経路ですが、候補として
◇下り:JR函館駅→江差、上り:江差→五稜郭→市電函館駅前(魚市場通)
◇上下線とも:函館市電電停から出発→五稜郭から鉄道線で江差まで
◇JR函館/函館市電・電停スタート→五稜郭で連結→江差へ
*車両は?
◆ディーゼル車のみ用意するか(A案)
◆ディーゼル車+電気車も用意するか(B案)
最近、函館本線のC62のかつての撮影名所、目名から倶知安にかけて(平均勾配22-3‰)キハ201系ディーゼル車がサミット近くの登り勾配でもどんどん加速していくという話を聞きます。自分も確かめてきました。
ですから、例の、分水嶺を楽に越えるには現在の250-300PS/40ton≒6.3-7.5PS/ton 程度の出力では乗客を呼び戻す魅力はない!ということになります。
では、次にA、Bどちらが優れているか?ということになりますと、今後のことを考えますと「B」でしょうけれど、旧市電路線の復活には時間がかかるでしょうから「当分A」またはいっそのこと「A+B」で走らせるという手があるのかもしれません。
<図9:新車輌の走行性能>
・ディーゼル車のみ
・路面タイプの電車+ディーゼル車
・上の二つを連結させて走らせた場合の性能を書いてみました。
吉堀駅から例の分水嶺のピークまでが8.6km-16‰(最急勾配25‰-距離不明)ですが、細かいことを考えるときりがありませんので、類似の条件の線区で今テキトーに作ってみた車輌で、江差線の輸送を改善しうるかどうか、考えてみましょう。
出発は、ディーゼル車がJR函館駅、路面電車+ディーセル車が市電の魚市場通から函館駅前電停のどこかがスタートです。
両者は五稜郭で併結、海峡線に入ります。
4輌で13x4=52mなので、通常車両の2.5輌分。木古内までの、海峡線設計最高速度100km/hrを越える105km/hrです。
五稜郭・木古内間は37.8kmで、江差線列車は60-65分ほどの所要時間です。
表定速度は所要60分なら37.8km/hr。
ここで類似路線として、手稲・小樽間23.2kmを出そうと思います。
距離は少し短いですが、この区間、設計速度が120km/hrですが、線形が悪く、実際は80km/hrで精一杯といったところです。
ここを夕方、キハ201系の手稲発17:11の各駅停車小樽行きが31分で走ります。
表定速度は44.9km/hrです。
そーぞーの産物列車を使うとやはり、表定速度は44.9km/hrなので、五稜郭ー木古内間は50-51分と約9分短縮。
そして、吉堀ー神明12.8kmを含む木古内・江差間42.1kmの代用として、倶知安・小沢間の倶知安峠(20‰勾配対称型)を含む蘭越・小沢間40.2kmを使います。
ここを201系ディーゼル各停列車は49分で通過。表定速度は49.2km/hr。
江差線の先の区間は67分が一般的なようです。ここでは18分ほどの短縮が期待されます。
従って木古内ー五稜郭約120分の所要時間が95分程度にはなりそうです。
さらに、乗客が少ないときは、路面タイプは、函館・木古内間の運用に限り、一方、江差・木古内からきた4連、あるいは、電動車とディーゼル車は前者であれば、五稜郭で2分され、ディーゼル2連は鉄道線を通って函館駅へ、電動+ディーセル連結車は、旧市電路線部分は、ディーゼルエンジンで走るわけにもいかないでしょうから、路面トラムがディーゼルをひきます。
60KWx2=3.9PS/tonと非力(◆)ですが、五稜郭駅・魚市場通 約4.5kmはほぼ平坦ですので、何とかけん引していけるでしょう。
やはり、最近のカンキョー問題を考えますと、「街中」をディーゼル動車はまずいですね!
2輌で26mはたぶん軌道法OKと思いますよ・・・いくら鈍くても一回の信号インターバルで交差点を渡り切るでしょう。
◆例えば、札幌市電8500形:電動機出力:60kwx2/自重18トンですが=9.1PS/ton.
240形:電動機出力:37.7kwx2/自重14.4 tonなので=7.1PS/ton
参考
☆1.日本鉄道旅行地図帳1、北海道、新潮旅ムック、今尾恵介氏監修、2008年
☆2.JTB全国時刻表、2012年11月号
☆3.「函館・千歳・室蘭線の路線変更の記録」、祖田圭介氏、鉄道ピクトリアル、
1995.8,Vol45,No.609,P50,
☆4.昭和39(1964)年10月号の時刻表内の列車編成表が掲載されている
「時刻表にみる<国鉄・JR>列車編成表」三宅俊彦氏、寺本光輝氏著、
Can books,JTBパブリッシング,平成23(2011)年11月
【江差線廃止問題考察 まとめ】
だらだらと書いてまいりましたが、「江差線はまだ工夫すれば、<つぶす宣言>をだすには早かったのでは?」という思いが書き始めた動機でした。
言いたいことは一通り言えたつもりです。
「延命しても近い将来廃線になるんじゃないか」というご質問は当然出るでしょう。
「それなら、やっぱり無駄なんだから、赤字がかさまないうちに、廃線にしてしまおうよ。」
これまた当然のご意見かと思います。
それでいいと考えております。
この記事で、皆様には、本当に、江差線を残すために、あるいは、江差町や、道立江差病院が機能するように、(江差線に限らず)赤字地方線区に、
国や自治体が、「鉄道(あるいはバスでもいいのかもしれませんが)-公共交通を福祉の一部と考え、手を差し伸べてくれたかどうか・・・
「―例えば、晩年~最晩年の新潟交通・電車線(関係者の方々へ:御気に障りましたらご容赦ください)のように、東関屋・燕側両端から短距離の区間運転を相当頻回にだしてみたり、元・国鉄の臨港線跡地に自社路線を敷設、新潟市中心部に進出を試みますが、かなわぬままほどなく、路線短縮を経て、全線廃線になったのは皆様よくご存じかと思います。
江差線はそのような「刀折れ、矢尽きるまで」ねばった、新潟交通さんのような印象が薄かったものですから・・・・・」の、御判断の材料の一部にでもしていただきたかったのです。
今までのまとめを書きます。
①「道路(バス)は鉄道の代わりになるか?」
◎「本年5月のナニヤラ協議会で、江差線・江差ー木古内を第3セクター化。その後の3年間の赤字が約52億円??」
それから約4月ほどして急転直下、廃止の御意向。
「3セク化」も「お上」の上意下達のようです。
そして割とすぐさま「廃線」。
①-1のポイント
◎「3セク化」で果たしてどこまで業務効率化が可能かトコトン協議した形跡がない。
もしあれば、3年間で赤字が50億出ようが4月程度で「廃止」に方針転換するのはあまりにも安易。
おそらく、「廃止」は「3セク化」と同等程度の選択肢にあり、明らかに「アトダシ・ジャンケン」を感じます。
ただ「3セク→廃止」と短時日のうちにかわってしまったのは何かきっかけがあったと思われますが、何かわかりません。
案外、消費税税率アップによる維持費高騰がみこまれたのしれませんね。
軌道撤去後の問題点として
◎「神明ー吉堀」間では軌道撤去後の道路に並走する道道の整備が分水嶺前後に万全ではないところがあるようですが、(①-1、図1をご参照ください)では、今の道路状況で代替バスが走り始めるだろうか?・・・といった疑問、また、こういった質問に明確に答えてくださる行政官がおいでになるのかどうか?
◎そして、ここで江差線沿線が災害などで困った状況に陥ったとして、近隣の住人を 例えば内浦湾側に避難させるのに道路と鉄道両方で、避難と救助を3方向に分業できたらいいな、といった夢物語のようなご提案を述べましたが・・・
あるいはここで江差線は壊滅的打撃をうけて廃線になるかもしれませんが・・・
①-2のポイント
ここでは以下の2点に言及してみました。
◎地域基幹病院「道立江差病院」の今後
・相応の資金を投入し、おおきくしてきた地域基幹病院(道立江差病院)ですが、江差から南下する道道を使うと、救急自動車の速達にはこころもとありません。
「救急ヘリですか?」江差から岩内の通年の強風を御存知ない方はそうおっしゃるかもしれませんが、一年を通して「ヘリ」を使うのは難しいと思われます。
・せっかくの医療施設が使いづらくなっていきそうです。
特に、江差以南の患者さんは、道立江差病院を素通りして、北廻りで整備の進んでいる厚沢部経由の道道を使い、直接函館の病院を使うようになるかもしれません。
◎「函館を経由しない」札幌方面への交通網は、これから強化されるか?
=「江差ー熊石ー八雲」のバス便は今後札幌方面への乗客により有益に機能しうるように交通網が 改編強化されるか?
・何とも言えません。現在函館バスさんが1日2往復しているだけです。
需要=供給、といったところなのでしょう。
しかし、北海道新幹線は八雲に新駅が出来ますので、近いうちに交通網再編が起きるかもしれません。
②のポイント
◎「金銭的問題」・・・国家予算は適正に分配されているか?
地方交通線にも金が来ているか?
・「国債」の発行時期は正しいのか? 国民の購買意欲をそいでいないか?
・「消費税率」を引き上げ、
1)赤字国債の埋め合わせは出来ず
2)不景気+税率引き上げによってもたらされるもの、いろいろありますが
買え控え・・・こんなのはまだかわいいもんです
少子高齢化・・・20年後くらいに大きな代償を払わされるかもしれません
③は(函館地区)鉄道網再建へのモーソーで、ポイントは特にありません。
済んでしまったこと、決まってしまったことですから。
多少言いたいことがあるとすれば
・国鉄が黒字のうちに分水嶺の路線改良をやっておいてほしかったなー
・LRT方式で函館市電と一緒にはしらせてみたかったなー (五稜郭公園~江差桜百選ツアーなど組んで)・・・
本文では函館中心部ー五稜郭駅の乗り入れしか書きませんでしたが まだまだ観光ほか需要は掘り返せば出てきそうですが?
・ちょっとした観光地でも、ネームド・トレインをワザワザ作って大いに宣伝する「JR九州」の「商売上手」のようなところが少し足りなかったのも事実かもしれませんね。
いずれにしても、自分には少し心残りある廃線となってしまった江差線です。
結局愚痴の連続になり、不愉快にお感じになった方もおいでだったと思います。
その点深くお詫びいたします。
また、まだ少し、国防費について少し書き残したことがありますが、あまりにも偏った考えですので、次回以降「番外編」として簡単に書くことにしました。
ご興味のある方はご一読してみてください。
『【江差線廃止問題考察 ③-2】 続・江差線の維持あるいは再生について・・・いまさらですがこんな方法があったのでは?』終わり
『【江差線廃止問題考察④】番外編<最終章>(Ⅰ) 「防衛費論をもう一度」』へ続く
(文・図 / 黒羽 君成)