【石北本線改良案 - 4/5】重軌条化の前にやっておくべきことはないか?(3)◆旅客編2
2018/06/10
◆石北本線改良案・旅客編その2
どうも切れ目が悪くて申し訳ありません。前回に引き続いて「オホーツク」をどうすれば少しでも速くなるか考えていきたいと思います。
スポンサーリンク
石北本線改良案・旅客編その2
ところで・・・前回の、2駅間の(大変大雑把ですが)私の所要時間の出し方は御理解いただけたつもりで、お話を続けます。
最終的に、旭川・網走間全行程の所要時間の計算が目的だったので、まず絶対消費されるものは
◎停車時間:
今回、遠軽3分+基幹駅3か所x1分+その他の駅x5x30秒+信号所4分
計12分30秒(10か所停車)
◎発車・停車ごとにスタートダッシュ・制動時の加速・減速は時速72kmではありません。
上記の10個所以外、下りなら、旭川のダッシュと網走の制動時は72km/hrで走ってはいません(前回・図2の台形で斜めの部分)。
では現行①チームの所要時間を計算してみましょう。
図2の台形の端の部分は、全行程で両側型x10+片側型x2回あります。
次に、旭川・網走間で時速72kmで走行中の時間帯は、台形の斜め線部分を除いた平らな部分であります。
従って、
◆1:始めに72km/hrに到達するまでの時間を計算
◆2:これを22倍すると(10個所停車+旭川出発+網走到着の)スタートダッシュと制動時の全時間が出てきます。
◆3:これに
(スタート時/停止時[=時速0]+時速72km/hr)の1/2、つまり時速36km(台形の斜め線部分の平均速度)をかけると
加速・減速中の走った距離がわかります。
(※※これは下でもう一度使います)。
◆4:最後に旭川・網走間237.7kmから
◆3の距離を引いて72km/hrで割り<A>、
◆2の時間<B>、停車している時間<C=全列車12分30秒>、
をすべてたした所要時間です。
<A>は前回全チームで停車発車時の消費時間は計算済みで、・・・上の計算では◆2にあたります
①現行チーム:6.6PS/ton,加速度0.83km/hr/sec
②北斗車輛借用チーム:10.16PS/ton,加1.27km/hr/sec
③s宗谷1台借用チーム:10.64PS/ton,加1.33km/hr/sec
④s宗谷2台借用チーム:15.26PS/ton,加1.78m/hr/sec
(参考)s宗谷編成:19.7PS/ton,加:2.4km/hr/sec
①-④チームに上の加速度から、時速72kmに達するまでに、
①チームは87秒
②チームは56秒
③チームは54秒
④チームは40秒
s宗谷編成は30秒かかります。
次に、加速・減速22か所ありますので、
①-④チームに22倍すると、発着時、「前回の図の台形の斜めの部分」に相当する全22か所分の時間がでてきます。
さらにその数値に時速36km/hrをかけると、(時速36kmをかける理由は上の◆3にあります※※)加速・減速中の距離が出ます。
詳しくは、再度ながらで恐縮ですが、前回の図2をご参照ください。
これは2駅間の計算ですが、これが11回集まったと思っていただければさいわいです・・・
さて実際は、①チームで計算した場合、全発着時の加速・減速に87x22=1914秒=31分54秒かかりました。
上記<B>時間。
またその間 31分54秒X時速36km=19440m=19.44km走りました。全行程237.7ー19.4(km)が時速72kmで走ることができる距離です。
(237.7-19.4)÷72=3時間1分52秒・・・上記<A>時間
従って、この列車の旭川・網走間の所要時間は、全停車時間<C>時間の12分30秒を加えて、3時間1分52秒<A>+31分54秒<B>+12分30秒<C>=3時間45分36秒・・・今の表定速度とあまりかわりありませんでした。
同様に
②チーム(北斗車輛借り受け)は3時間40分25秒
③チーム(s宗谷1輌借りうけ)は3時間40分29秒
④チーム(s宗谷2輌借り受け)は3時間37分55秒
結果、旭川・網走間の表定速度70km/hrは、所要時間3時間23分45秒ですので、4チーム最強の④チームでも 14分10秒及びませんでした(表定速度65,5km/hr)。
ここで②と③チームの所要時間が、強力編成の③チームの方がわずかですが、掛かってしまっていることにご注目ください。
そのカラクリですが、③チームの方が②チームより加減速がよく、それに費やす時間は短かったのですが、(◆2:20分32秒◆3:19分48秒)、その分時速72kmで走る距離が③チームの方が若干長く (◆2:3時間7分23秒◆3:3時間8分11秒)、③チームの合計消費時間が4秒長くなったのでした。
さて、結局、目標に一番近いところにいる列車は④チームなので今後はこの列車に絞って話を進めましょう。
参考に、全車s宗谷編成との比較も適宜出します。
さきほどの検討で、目標に届かなかった14分強をどうやって短縮するか、いくつか手は有るかと思いますが、
◎1.部分線増を行い、それでも万一列車交換が発生した場合は優等列車を優先して先発させる。
◎2.平坦部(ここでは旭川・上川間と留辺蘂・網走間)の平均速度を上げる。
◎3.(可能かどうかは別として)旭川・網走間の走行速度をあげてみる。 ― お!段々ホラ話になってきたぞ!!
まず「◎2」からいってみましょう。
たとえば、平坦線の時速を80kmに上げてみた場合、加速・減速度は変わらない以上、80km/hrに到達する時間は、当然72km/hrの時よりはかかってしまうわけです。
そればかりか、せっかくの80km/hrで走行できる時間が短くなるのです。
④チーム列車を用いて平坦線部の走行速度を上げた時の旭川・網走間の所要時間は、先ほどらい仕様の加速度で運転したと仮定した場合
◆時速80km/hrで走行:3時間51分47秒
◆時速85km/hrで走行:3時間48分38秒
◆時速90km/hrで走行:3時間45分35秒
この検討はご覧の通りの結末で、かえって所要時間が延びてしまいました。
次に、「◎1」ですが、もし、①ー④チームの所要時間の検討で信号所の「4分停車がなければ」、④チームの旭川・網走間の所要時間は、<B>時間は停車が1回減るので40x20秒が発着時の加減速に使われます。
これは800秒=13分20秒で、この間進む距離は8kmです。
従って<A>時間は(237.7-8)÷72=3時間11分25秒
合計3時間11分25秒+13分20秒+(12分30秒ー4分)
=3時間33分15秒と先ほどより4分40秒ほど縮みました。
まだ9分45秒予定より長いです(表定速度:66.7km/hr)。
一見あまり、有効と思えない、この列車交換の工夫は、時として以外に役に立つことがあります。
たとえば、1970-80年代、西日本鉄道では、大牟田本線の大牟田側はそれほど複線化が進んでいませんでした。そこで、適当に2-3駅離しては、2-3駅分複線化し、そこで特急を行き違いさせるという手を打ちました。
ですから、石北本線も、山岳路線に信号所を作ることももちろん大事ですが、平坦部や、山あいでも比較的開けた所を複線化してみては?とおもいます。
候補としては
*将軍山(新旭川起点17.4km)ー愛別(同25.9km)
*上白滝(同78.9km)ー白滝(同82.2km)
*瀬戸瀬(同109.7km)ー遠軽(同120.8km)
*遠軽ー安国(同128.8km)
などは、多少の切り通し造り工事が必要な個所もありそうですが、今なら宅地化も進んでおらず、複線化は可能と思われます。
重量貨物列車を残す予定であれば、検討して頂いてもいいと考えますが?
【図3】
※<緑の三角>の所で、現・石北線と立体交差を作ってしまうので、線増は、現在線と333号の間に作りたいが、川と国道が近いところ(青☆)では、橋梁物を作る可能性もあるため、国道の南側に新線を敷設するという想定で線増を考えました。
また、話が少し脱線しますが、「瀬戸瀬・遠軽間+遠軽・安国間」の複線化は過剰投資ではないか?とお考えの向きもあるかもしれません。
でも、瀬戸瀬・遠軽間のように路線敷に山の傾斜が迫り、河川敷も続く、線形も窮屈なロケーションにわざわざ軌道敷を置いておく理由はないと思います。
むしろ(事情が許せば)、現在線を放棄する手段をとってでも、湧別川を挟んだ対岸の田園地帯に線形の良い新線を作るべきと思います。
また、時折出ては消える「遠軽駅のスイッチバック解消」ですが、国道333号と242号の交差点まで駅が南下するのでしょうか?
それであれば、新しい鉄道施設、新しい街づくりが必要です。今の駅はそのまま使えないものでしょうか???
【図4】
旧・名寄線の敷地など利用して、
*スイッチバック駅を解消
*駅を動かさない・・・・
と言う方法は無いでしょうか?
上の方法では、架橋が2か所、街中の方々の退去は発生するでしょう。
最大の問題は、このループで、曲線の半径は約400-500m程度と急曲線であること、高台の上に建つ遠軽駅に、このアプローチは可能かどうか・・・と言ったところでしょうか。
※遠軽駅からの旧線を消していないのは車両基地あるいは停泊線のつもりで残しました。
さて、最後の◎3については、④チームとs宗谷編成に競争させましょう。
所要時間の求め方は先ほど来と同じ方法です。加速度と旭川・網走間の目標到達時間のみ確認しておきましょう。
◆旭川・網走間の表定速度70km/hrは、所要時間3時間23分45秒です.
◆s宗谷編成の加速度:2.4km/hr/sec
◆④チーム編成の加速度:1.78km/hr/sec です。
最高時速を72km/hrから1km/hrずつ上げていきます。途中の計算を書きますと煩わしいので、結果のみ書くようにしました。
【表3】
表3からは、山岳路線で表定速度70km/hrを保つためには、走行速度の平均を+8km/hr程度で走りきらねばならないことがわかりました。
これは、走行時抵抗など考えますと、時速70km/hr以上のディーゼル優等列車は、調べ得た限りでは、
☆スーパー◎◎とついた強力エンジン搭載車
☆平坦線を走るJR四国の強力振り子車群 (うずしお、しまんと、宇和海)
☆寝台列車(北斗星、カシオペア)
☆ダイヤの関係(電車列車の邪魔にならないように/ あるいは一部高速化済区間を走行:サロベツ)
☆他社とのアツレキ・わけありで速く走らざるを得ない、快速「みえ」など
実は山岳特急としては立派なモンなのです。
まず、日本中、どこをさがしても、山岳地帯を走る特急で均衡速度が70km/hrのディーゼル特急は智頭急行線とワイドビューひだの一部程度しかないでしょう・・・現在の62km/hrで充分なのです。
実は、札幌ー旭川がどーも・・・かえって、今回の検討で、オホーツクが、案外山岳部で、健闘していることが分かり、大変驚いております。
また、この際ですので、JR北海道さんに注文をつけたいのですが・・・
①貨物列車は大切にしてください!
②列車の交換設備を充実させてください!!線増でも、信号所増設でもなんでも!!!
③遠軽駅のスイッチバックをなくして、新駅を作るのは本当でしょうか?せめて、古い駅設備はそのまま使えませんか?
④各停電車列車(721系以降の731,733,735系の通常運転設計速度が120km/hrですのに・・・実際白石・厚別、江別・豊幌の夕張川鉄橋前、幌向・上幌向ではそれらは120km/hr運転、森林公園・大麻間では115km/hr運転を行っているのにもかかわらず、「オホーツク」は編成中3台または2台が110km/hr対応車なので、スピードが出ません。
よく所要時間が、sカムイと比べて10分以上札幌・旭川で余計にかかるので、261系を投入してほしいという声をよく聞きますが、電車と同じ120km/hr対応車を集めて、115km/hr程度で走らせていればいいと思います。
いずれにせよ、普通電車より最高速度が10km/hr下回る車両を「特急」とするのは、アンマリではありませんか。
ちなみに、先の④グループ(s宗谷2台入り)列車で、札幌・旭川を最高115km/hr、停車駅、岩見沢、美唄、砂川、滝川、深川とし、
停車時間を岩見沢と滝川を1分、他を30秒停車にしてみます。
石北線の評価と同じ計算方法ですと、札幌・旭川が1時間18分37秒で走りきるというなかなか「ブラボー」な答えが出ました・・・といっても、sカムイより速いほどですから・・・一律115km/hrで走らせた数字上のペテンのためとお断りしておきます。
これなら旭川以東が、④の72km/hrで走った時の最終記録でいいや、という気分にもなります。
今回の大ボラ的検討での「オホーツク」の全行程所要時間と平均時速(=平均表定時速)
札幌・旭川:所要時間→1時間18分37秒
時速→104.4km/hr<1>
旭川・網走:所要時間→3時間37分55秒
時速→65.4km/hr<2>
(本来の目標:所要時間:3時間23分45秒、
時速:70km/hr)・・・これはもう放棄!
<1>+<2>で4時間56分32秒(75.8km/hr)
現行より約25分の短縮です。
この時速で、全国のディーゼル特急の15位前後です。
遠回りの末尻すぼみか?
次回重軌条化です。
『【石北本線改良案 - 4/5】重軌条化の前にやっておくべきことはないか?(3)◆旅客編2』 終了
『【石北本線改良案 - 5/5】重軌条化と金がなかった時の逃げ道』 へ続く
図・表・文/黒羽 君成