汽車旅モノローグ~鉄道小話

鉄道の話題・今昔話を綴るブログ。旧「黒羽君成の鉄道小話(北海道コラム)」

鉄道雑学

【江差線廃止問題考察 ①-1】 「道路(バス)は鉄道の代わりになるか?」

2018/06/10

昨今話題の「江差線」について、複数回に渡って検討していきたいと思います。

話の進め方としては、以下のような流れになります。

①-1 道路(バス)は鉄道の代わりになるか?
①-2 地域基幹病院(道立江差病院)の立場は?
①-3 「江差ー熊石ー八雲」のバス便は今後札幌方面への乗客により有益に機能しうるように交通網が改編強化されるか?

② 「金銭的問題」・・・特に国防費は適正に使われていると言えるか?

③ 江差線の維持あるいは再生について・・・いまさらですがこんな方法があったのでは?

 

といった段取りで話を進めていきたいと思います。

スポンサーリンク

①-1「道路(バス)は鉄道の代わりになるか?」

少し時間が経ってしまいましたが、江差線・木古内ー江差間の廃止が100%決定したと新聞、TV等々で見聞きしました。

5月まで遡りますが、高井北海道副知事と沿線1市2町の各首長で作る、「函館市ー木古内町ー江差町・江差線第3セクター開業準備協議会が、本年5月23日に渡島支庁合同庁舎で開かれたと、翌日24日の函館ニュースは伝えておりました。

協議会の一番の眼目は、3セクにしてみても、開業から3年間の赤字を51.6億円と試算。この財源をどこから調達するか?ということでした。

もちろん、先立つものがなければ、車輌は作れない、走らない、そして設備の維持すらできません。

しかし、こんなに簡単に「廃止」の決定をしてしまうこと自体、先の「・・・協議会」の賛成(善意にとっても止むを得ない妥協?)もあったかと思われますが、今、江差線を失うことの重要さを御理解いただいている方々の決定とはとても思えません。

金銭勘定も大事ですが、それ以前に、江差から鉄道をなくすとどういうことが起こるか・・・金の話はそのあとです。

一度軌道をなくして、それが裏目に出た場合、もう一度交通網を作り直さなければなりませんが、無限に金と時間がかかります。

 

たとえば、公共バスが結構な繁盛ぶりを見せている岩内線のように・・・

あそこに、鉄道で札幌ー小樽経由ー岩内間の快速便を1-2時間に1本、201系ディーゼル車で走らせたら、今でも結構集客できるンじゃないか?・・・なんて考えてみているのは私だけではないと思います・・・・それに昼間は3輌編成で充分ですもん。

停車駅は・・・小樽までは同じ、以西は・・・きりがないので、この次にしましょ。

また、奇跡的に蘇った「えちぜん鉄道」のように・・・(☆1)

 

JR江差線と路線バス

現在江差ー函館間交通は、鉄道・バスとも下記のように6往復ずつありますが、北廻り=厚沢部(アッサブ)廻りのバスのほうが、全便乗り換えなし、所要時間は130分と一定で、確実です。料金は1830円。

一方JRの運行状況は下記のごとくやや悲惨です。運賃は1710円?。

☆JR:函館4往復+木古内乗換2往復
◇直通便は2時間10分程度ですが、中には木古内で1時間待たされるものもあります。
◇乗換便は木古内の接続によりますが、3時間 前後で、中には函館・木古内間特急乗車を 強いられるものもあります

☆公共バスは、鉄道と並走する国道がありますが、そこには通っておらず、北廻りで厚沢部を通り、6往復2時間10分程度。
こちらのほうがJRより混んでいるようです。
上のような理由で、それは当然だと思います。

 

zu01
<図1>江差線と周辺交通網

※海峡線は130km/hr以上の高速鉄道ですが、木古内・函館間の江差線は線形の悪さから100km/hr制限つきです。
元々、江差線は、「上磯軽便線」からスタートしており、あまり、完成度が高く作られてはおりませんでした。

 

あとは趣味的に函館ー松前のバス便が3往復あり、木古内で乗り継ぐ手もありますが、接続が全く考えられておらず(本来待つ前の方のための交通手段でづので、当然なのですが)木古内で、ひたすら待つのみです。

ただ、最終章にも書かせていただく予定ですが、「神明」と「吉堀」のあいだに、「七ツ岳937m」と「瓜谷山549m」がつらなり、分水嶺となっていて、人の交流がほとんどないところがあります。

 

両駅間の駅間距離は13.2kmと長く、最急勾配は25‰(出典:Wikipedia)と結構急で、分水嶺となる資格充分、人の交流を絶つのにこれもまた充分な厄介者です。

並走する道道(北海道管理道)5号線は、特に分水嶺付近において、整備が完璧とは言い難い(照明、曲率半径、幅員)ようです。

軌道撤去した後の土地を幅員増加などの、道路改良に使えるのでしたらよいのですが、道道の線形が悪い、分水嶺前後では、江差線と離れているため、当該部の道路改良は、あるだけの土地面積でしなければなりません。

ここには、代替バスが走るのでしょうか?
今から道路改良工事に着手しないと、江差線最終日まで間に合わなくなりますよ・・・

 

元々江差線は、大正2年(1913年)、上磯まで軽便線として開通。
しかしその時代から、海峡線の一部となった、木古内・五稜郭間を除いて、線路改良がされていません。

ここを・・・いまさらですが、長大トンネルを開削しておけば・・・といった歴史の禁じ手が使えたらもっと江差線は変わっていたと思われます。道道もそうしておくべきだったかのでしょう。

 

ここで江差線沿線が災害などで、困った状況に陥ったとして・・・それより、近隣の住人を例えば内浦湾側(八雲・長万部側)に避難するには:

*北向きの国道・・・八雲町熊石地区→雲石峠→八雲町
*北廻り国道・・・アッサブ廻りで函館まで
*鉄道

上記のような、道路と鉄道と両方使えるようにしておいたほうが、いいのではありませんか?

 

もし、例の分水嶺の箇所を「道路」の避難路として使うのであれば、今から長大トンネルを開削して逃げ道を作っておかなければ・・・いくら車が軌道より勾配に強いといっても、山崩れにでもあえば、避難路としては一瞬にして使えなくなります。

仮に、鉄道として残しておく場合でも、動ける車をどんどん集めて、脱げる人も集めてあったとしても・・・山崩れにあえば逃げられなくなるのは同じ条件です。

ただし、道路か軌道敷がダメージを受けていない場合は、土砂をよけると通れますので、道路のほうが少し早く復旧しますでしょうか?

それでも、鉄道も一旦回復すれば重量物は運べますし、ダメージが少ないときの、人間の避難用の大量輸送は鉄道にはかないません。

ここで災害時はおそらくほぼ片輸送に近くなると考えられ、逃げる人は鉄道、災害救援物資は道路か空輸と役割分担も便利かと思われます。

問題は、上の3路線で路面の崩落が起こった場合です。港の片隅でも崩れていなければ、そこに集合(それができるか?)海路で逃げますか?

とにかく、いまさら言っても遅いですが、人が住んでいない、分水嶺地域を13kmにわたって、線路改良、道路改良を怠ってきたのはよくなかったと思われます。

次回は、軌道撤去後の道立江差病院は今までどおりの活躍ができるかを検討してみたいと思います。

 

 

参考

☆1:福井ー勝山間の前経営者である、「京福電鉄・福井支社」が平成12(2000)年12月、平成13年6月、左記の半年間に、当該路線で正面衝突を2回起こしました。
同社は、元々この路線を短縮し、営業を続行する予定でしたが、廃止届に切り替え関係官庁に提出。
一旦は受理されますが、以後朝夕の国道の通勤ラッシュが酷く(以前の所要時間の3-4倍かかりました)、福井県は旧線を「第3セクター・えちぜん鉄道」として、平成15年2月から営業再開しました。

一旦廃止ののち、路線の完全復活を遂げた例は「えちぜん鉄道」以外日本ではありません(休止再開例はあります)。

 

①-1 終了→ ①-2に続く

 

(図・文 /  黒羽 君成)