汽車旅モノローグ~鉄道小話

鉄道の話題・今昔話を綴るブログ。旧「黒羽君成の鉄道小話(北海道コラム)」

鉄道雑学

【江差線廃止問題考察④】番外編(Ⅰ) 「防衛費論・再考」

2018/06/10

■0-0 はじめに・・・のさらに前に

※この章の目的は

☆「もう少し、安上がりの自衛隊を作ってください」というお願い

☆「外敵に対してどこまで自衛・抵抗するのか」という根本方針(グランド・デザイン)を教えていただける方がいないものか

と、シロートの目から書いてみました。
→お!文章の書きようによっては、ひょっとして、地方交通線にもおこぼれが・・・

 

※※また①②でも書きましたように、この記事を書いた根底には、私は福祉は大事だと思っていますし、日本の風土も好きですし、自衛隊隊員の方々は日夜働いていらして「エライ!!」という気持ちでかいているということと、軍縮を積極的にお願いしているのではありませんので、この点は皆様忘れないでくださいね。

そして・・・鉄道との関係を明確にするため、またあるときは②との重複を避けるために、段落が変わる毎に、既出事項のサマリーを載せてから本文が始まります。御了解ください。

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■0-1 はじめに、国防費は国家予算のどのくらいの割合を消費しているのでしょう?果たして国防費は圧縮できるのでしょうか?

☆国防と防衛費について、予算に対する枠決めとミリタリ・バランス(軍事力分析)について。

防衛費は昭和51(1976)年、三木内閣で国家予算の1%枠がきまったものの、安保条約同盟国・米国から防衛力強化の要請があり、この枠は中曽根内閣の昭和61(1986)年に撤廃されました。

しかし、しばらくは1987-89年まで1.004-1.013%とわずかな増加にとどまっていました (☆1)。

規制がとれた現在に至るまで、金額ドル・ベースで世界11位、GDPベースで同6位(1%)であります (☆2 )。これは、最近では年度国家予算の4-5%に相当します。

<英国:シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)>作製の”ミリタリ・バランス” 2011年版>においても日本の軍事力をGDPの1%しか国防費に使っていなくとも、ミリタリ・バランスでは世界6位と評価しています。

細かく見ていくともう少し支出を圧縮できそうですが・・・?圧縮分は福祉など他の分野に使えないのでしょーか?

・・・この辺は難しいので簡単にいきましょうね。私もよくわかりませんから・・・トコロガ実情は・・・

周囲を封鎖されれば燃料自給率はほぼ0%、食糧自給率もひとけた(よく30とか40%なる数字がでていますが [39%☆3]、それは家畜を<日本製飼料で>食べられるという前提に立ってのお話で、(実は家畜飼料もほぼ輸入に頼っていますし、加熱調理に使うエネルギー自給率も4%[同] です)
という我が国の悲惨な状況なはずですのに・・・

腹が減ってはイクサはできません。燃料がなければ戦車やヒコーキだって動かない・・・世界6位というのは少し無理があるのでは?・・・

<再び(IISS)>発表報告書の日本の周囲の国々で目立つ点は・・・2011年の時点で、過去10年、毎年、中国は実質10.9%ずつ拡大しており、この年度は、アジア全体の30.54%、日本の約1.5倍、インドの3倍にあたりました。中国の軍事費がアジアで突出しています。(☆4)

先のIISS<ミリタリ・バランス2012年版>では・・・財政再建で国防費を削減する欧米に対して、中国だけでなくアジア諸国が空・海軍力を増強し、地域全体が緊張していると指摘をうけていました。

国家間の緊張を和らげる枠組みがアジア地域には必要と提言されています(☆4)

 

■(Ⅰ)はじめに:現在領土問題、ミサイル飛来問題?などを抱え国防費の圧縮は可能かどうかシロートなりに概観してみました。

これは必要経費として支出を小さくするのは無理だろうな!と思われる諸問題。
■(Ⅰ-①-1)<領土確保の必要経費は圧縮可能か?>

さて・・・ここ数年、「竹島」「尖閣諸島」などといった、日本周辺の領土保全ともいうべきことについて、国境周辺が大変騒がしくなってきております。

で・・・このような環境の中、 「国防」の重要さは一層増しているように感じられる今日この頃でありますが、では、日本の「防衛費」の運用はどうなっているか?

まずみてみましょー。え?鉄道も関係大アリですよ!

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前段でお示ししたように、最近の世相の中では、情報交換だ、イージス艦を使っての強行偵察だ、等々防衛費の圧縮などは夢のまた夢・・・なのでしょーか?

ま、そーゆー屁理屈・他国の台所事情はともかく、南米・コスタリカ共和国のように、一部の警察官に武装をさせて兵装をやめたら、国家予算の赤字が解消されてしまった国もあります。

ただ、あの一帯は、火薬庫みたいところですから武装警官が少数いても外敵には「自衛隊」ほどの活躍すら出来ずに、あっというまに、占領されてしまうでしょう。

☆でも、そういう地域の国にあって、国家福祉を第一にと、武器を捨てた腹のくくり方が素敵ではありませんか?!

こーぜんの秘密となってしまいましたが、一説によれば、他国との小競り合いが起こった時に、口は出すが、人・金・資源は出さない。
小国がどこまで、何をやればつぶされずに済むか分かっていて、それ以下のところでは好き勝手している世渡り上手の国で中立国家ではないとの評判もありますが。

 

☆もう少しミリタリー・バランスの話

ヨーロッパはEUの結束が実ったのか、ボスニアあたりの内乱が落ち着いたのかは知りませんが、防衛費は年々わずかずつ減少中であるとのこと。

一方、アジアの国々、特に上記のごとき著明な軍事費の伸びが、引き続き2012年も中国以外でも増強が続いています。

北朝鮮は前年度の倍とは言わずとも、それに追いつかんばかりに軍事に金をつぎ込んでいるようです。

なお、中国産軍事商品の実力ですが、空軍のレベルなどは欧米に比べ、20年ほど遅れているようです。

しかし、空軍は戦闘機中心に大陸間弾道弾、海軍では潜水艦の比率をあげ、質はともかく近代化に意欲的であることが脅威的と思われます。

この辺でそろそろ鉄道に話をちかづけないと・・・

 

☆「防衛費」の確保は、大変大事なことでありますが、平成25年度高齢者の健康保険料が10から20%に引き上げられるなど、福祉予算が切り詰められるのをはじめ、福祉行政が苦戦を強いられる中(実際には国庫からも15%程度の補助は出ていましたが、そろそろこの不況と高齢化の波でこれ以上補助率を引き上げるのは無理なようです[☆5]。

そんな中「最近、国防費は国家予算の4%台、GDPの1%程度であるから(☆6)、もう少し要求してもよかろう」と仰せの方もおいでになります。

しかし、福祉は今ご紹介したように惨状を極め(大げさ?)、赤字国債を解消しきれていない以上、可能であれば、防衛予算は切りつめたいところであります。

地方交通線だって、その切りつめた余りでいただけるものがあれば・・・やっぱり・・・そりゃほしいですよ。

上に申し述べた方々は、高齢者福祉の惨状を知ってか知らぬか、まだこのほかにも福祉の赤字部門はたくさんありますのに・・・

 

実は、このような背景には「日米安保条約」の中で、

①自衛力増強の義務
②共同防衛の義務

が明文化されてされていますので、ある程度、金を武器弾薬などにつぎ込まなければ、米国とのお約束が果たせないわけでー多分苦境に陥っている福祉資金のこともご存じの上で、①②も立てなければ・・・とお考えの関係者の方々の御心労も並大抵ではないと拝察いたします。

しかし、細かく見ていきますと・・・→Ⅱへ

 

参考

☆1:戦後防衛政策と防衛費、21世紀社会デザイン研究2010No9 真田尚剛氏)
☆2:ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)発表
☆3:農林水産省各年値,2008年
☆4:2012.3.7付け産経新聞記事より抜粋
☆5:全国健康保険組合24年3月報
☆6:2010年防衛白書

 

■(Ⅱ)自衛隊の現状

☆自衛隊の構成

とりあえず、現状をさらっと・・・自衛隊は、大まかには下のようになっておりまして、
「海自」:4.4万人、護衛艦53、潜水艦16を含む主要艦艇151隻、航空機310機。5「地方隊」に分担。
「空自」:4.5万人、戦闘機370機370機を含む各種航空機500機。
「陸自」:15万人、装備がXX台とやるより、たとえば、1台9億円の戦車を年間30台作っているetcと申し上げた方が分かりやすいでしょうか。

※実際これだけの予算で、これだけの人間と器材に飯と燃料を配給しているのだから大したものだと思いますよ。

 

☆☆ところで「自衛隊が自衛隊である条件」ですが、上の一行は死んでも外せないそうです。

「徴兵制」でないところ・・・これがあれば、強制的な兵役訓練がある組織ということで「軍隊」ということになります
◎「砲兵隊」をいまだに「特科隊」と呼んでいること。創世期のころはもっと照れくさく「戦車隊」を「特車隊」と言っていました。

 

 

■(Ⅱ-1)現状で疑問に思うこと(Ⅱ-1-1)戦車とそのほかの装甲戦闘車輌で倹約できませんか?

☆☆②のサマリー<1>日本の自衛隊のこれはもう一工夫?・・・とシロートの私が思うところ
◎先に、この予算でよくやっていると申しましたが、意外といいお買い物もしています。

特に光学機器に金をかけていますね。新型の武器とセットですから、単価は高くなりがちです。
☆☆②のサマリー<2>先代の主力戦車:90式戦車は日本の橋梁の65%しか渡れなかった。

☆装備の新旧交代について
◎新しい兵器作りのコンセプトは毎回ほぼ同じ動機から始まると思われます。
*時代の先端のものを使っていないと不安なのでしょうか
*時代を先取りしすぎていて、ほとんど値崩れしていない、概して新品を導入しなければ・・・というお気持ちが強いようです。

それは周囲の情勢から取り残されないため、日米安保の①のお約束のため、高価な御買物の必然?性がいろいろ出てくるかと思います。

でも、日本の橋梁の65%しか渡れない「90式戦車」を作ってしまったのは納得しかねます。
日本の国土にあった重量の装甲車輌をつくれば・・・戦車用鋼材の節約になりますし、道路・橋梁の維持費の負担減にもなるでしょう。
節約費用はまた何かに転用できます。

→ 一方で、1974年に制式採用された戦車を退役予定と言いつつも、定数を確保するためかまだ使いつづけている例もあるのです→次項参照ください。

このため、次の10式戦車(現用では最新)では、全国的機動運用が可能となるよう、90式と比べ一回り小型で、重量も約6ton程軽量になりました。


 

◇全国の主要国道の橋梁17920箇所の通過率
・10式(50ton-84%) ・90式(44ton-65%)・・・参考:74式(38ton)
・海外主力戦車(約62-65ton-40%)

◎参考
10式戦車、Wikipedeia
軍事研究 2010年9月号
グラフィックアクション(航空ファン11月号別冊)1994,No24

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<表1:陸自の現有戦車>

 


 

■(Ⅱ-1-2)陸自の旧式装備品の中で改良延命が可能な兵器はありませんか?

◎次に、部分的に改造して延命措置を施すといったことは、武器にはほとんどやっておられません。

例えば、せっかく残っている’74年制式化戦車(74式戦車)には改装延命化措置を施して、新車を調達するより、安価に済ませる方策をとるべきかと思われます→実例を下記に・・・その方法があまりとられていないのは、おそらく、オリジナル・スペックに手を加えると、性能が著しく落ちたり、 故障が多くなり、却って短命にあることを恐れてのことと思いますが。

しかし、過去には、旧・ドイツを中心として相当例見受けられます部分的改造・・・たとえば第二次大戦も下記のような改造が見られました。

 

☆退役が噂される兵器の転用方法はありませんか?(1):74式戦車

時代が違う!とお叱りを受けそうですが、一例をあげると、旧ドイツでは戦車が古くなってくると、全周性の砲塔を取り去って一回り大きな主砲を車体本体に取り付けるといった作業、たとえばⅤ号パンテル戦車が75mm戦車砲だったものを、車体本体に一回り大きな主砲88mm砲をとりつけて(ヤクートパンテル、主砲は左右に限られた範囲しか動きません)、終戦まで活躍させました。

この手法で大戦初期の武器が、おもに主戦場ではありませんでしたが、占領地のパトロール部隊などに終戦まで使われるなどずいぶんと長持ちさせられました。

 

panther
<図9-A>パンテルPanther A型,旧ドイツ帝国陸軍Ⅴ号戦車(A)
Jagtpanther
<図9-B>ヤクートパンテルJagtpanther,
(鉛筆画:4H、F、2B、9B)

Aは1943年初頭から実戦投入されたドイツ国防軍のⅤ号戦車パンテルA型。
BはAの半年遅れの6月から実戦配備のヤクートパンテル。

BはAと比べて上部構造の回転砲塔がなくなり、車体本体から主砲が突き出たようになっています。
旧ドイツ陸軍ではこのようなタイプの無砲塔自走砲(時には戦車代用として戦車部隊に配属されました)をたくさん作りました。

長所は、自走砲型は戦車型より一回り大きな主砲を搭載出来て、元の型と自重が変わらないこと。
姿勢が低くなるので見つかりづらい・待ち伏せ攻撃がしやすいなどがあります。

欠点はご覧の通り、砲塔の旋回幅がどんなに頑張ってもせいぜい各々左右20-30度程にしかならないことでしょうか。

A:自重44.6ton、主砲75mmx70口径
B:自重46.0ton、主砲88mmx71口径

※陸自でも装甲車輌(例えば現在退役候補に挙がっている74式戦車など特に)に一度は試みてもよい延命方法かと考えます(以下本文)。

 

今、退役準備が進んでいる代表的武器に、上記74式主力戦車、75式自走155mm榴弾砲、203mm自走榴弾砲があります。

前2者は現在も部隊の主力の座についている部隊が少なくありませんし、203mm榴弾砲は師団特科連隊の上のクラスの、特科群、あるいは方面軍の特科隊で扱う器材です。

いっそのこと、74式戦車は無砲塔で一回り上のクラスの主砲である120mm砲を搭載、主機関も720PS(18.9PS/ton)から1000PSクラス(=25PS/ton,仮に拡大版主砲にした場合の車重を38から40tonに増加すると考えます)のガス・タービンエンジンに換装し、射撃統制システム更新、サスペンション強化すれば、速度も(53→65km/hr)程度にはなるでしょうしまだまだ使えるはずです。

また、ただ、「古くなった」というだけで退役になったり、師団の主要装備の種類に変化があり、急に集めなくともよくなる武器もあります。

これは、調達時の調整・相談が足りないのでは?と思われても仕方がありません。

とにかく、採用時の装備品の購入には時間をかけて御一考いただきたいものと思いました。

そして、もっと重要なことは、勿論抑止力という意味もありましょうが、外敵が日本国土に入ってきた場合に、こんなに立派な武器ばかり取り揃えて、世界6位の重装備になってしまった軍事集団で、本気で本土で戦うの?と不安に駆られます。

次回はその早々に退陣をせまられた武器たちなどの、細かく重箱の隅をつついたあたりからお話をはじめましょー。

 

【江差線廃止問題考察④】番外編(Ⅰ) 「防衛費論・再考」:おわり

【江差線廃止問題考察④】番外編(Ⅱ) に続く
<図・表・絵 / 黒羽 君成>