汽車旅モノローグ~鉄道小話

鉄道の話題・今昔話を綴るブログ。旧「黒羽君成の鉄道小話(北海道コラム)」

車両・列車

<函館本線・大沼駅のD52>―撮り鉄気取りが行く

2018/06/10

私の中学の修学旅行は、3年生の春、昭和46年(1971年)5月、札幌を出発し、弘前―八甲田―浅虫以北の東北地方と函館を見て参りました。

もちろん「撮り鉄」なんて言葉すら存在しませんし、鉄道関係にカメラを向けると、周囲からは「気持ち悪いヤツ」と思われる時代でした。

修学旅行は専用列車が用意され、キハ56でした。当時の札幌・函館の最速列車はもちろん特急で、4時間20分程度で結んでおりましたが、急行もそこそこの速さで4時間40分前後の所要でありました。

私たちの、団体臨は5時間ほどかかっていたように記憶しております。

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函館本線・大沼駅のD52

さて、今回ご紹介する二葉の写真は、帰路の途中の函館本線・大沼駅で写したD52であります。

このD52のことをご説明する前に、時代を少し遡らせてください。

 

函館本線の小樽・長万部間、いわゆる山線は、昭和36(1961)年10月1日、道内特急第1号である「おおぞら」が室蘭・千歳線廻り(海線)で登場するときまでは、札幌・函館間のメインルートでありましたが、以後、優等列車の比重は海線に移っていきます。

そのころ、山陽路では電化が順調に進捗、東からは三原までと広島にあと一歩のところまで迫っていましたし、西からは小郡(現・新山口)まで電化され、非電化線区は約210kmを残すのみとなっていました。(山陽線の全線電化は昭和39年7月25日でした)

そうなりますと、この辺で働いていたSLは職を失うわけで、特に(特)甲線用機関車が多かった当地区は、線路条件が弱い他地区への転用は難しい状況でした。

しかし、C62は初めから軸重軽減改造が出来るように設計されておりました。

先台車の板ばねを16から17枚に増やすことにより、オリジナルの軸重16.08tonから14.96tonに軽減、函館本線の「乙線区にして15tonという軸重制限がある山線への入線試験に、見事合格。早速急行「まりも」「大雪」と、間合い運用でローカル列車1本を受け持ちました。

もちろん、「小樽・長万部間はC62の重連仕業」でした。

 

さて、私は、特にC62の改造の話を聞いていたりしたせいもあったのかもしれません。北海道地区には、中学生のころまで、函館線全線をはじめとして甲線区はないと信じて疑っておりませんでした(勝手な思い込みだと思います)。

ですから、D52を見たときは、軸重が甲線用の機関車(実数値は16.63ton)が、どうして乙線区に入線出来たんだ?と、正直、心臓が口から出そうなくらいびっくりしました。

「・・・こんな東海道・山陽線から比べて細いレールでもD52は走るんだ」と変に感心したりしました。

帰宅後、それが長万部から函館に向かう便で、大沼付近は甲線区であることを知り、「ベンキョー、タリネー」と落ち込みました。

 

20120930_01
<写真1>
長大なフレートライナーをいとも簡単にひきだしました。

 

20120930_02
<写真2>
今こうしてみますと、SLはスタートダッシュがよくありませんでしたね。

写真1,2とも
撮影地:国鉄・大沼駅構内
撮影日:昭和46(1971)年5月4日
機  材:キャノネットQL17(キャノン)もちろん一眼じゃありませんよッ!!!
条  件:f:8、シャッタースピード:1/125秒

 

D52の配置

蒸気機関車の配置表をWikipediaでみますと、昭和21年(1946年)3月には、札幌鉄道管理局下の長万部区に29輌配置になっており、函館・室蘭本線で使われたとありますが、戦時設計車の改修、戦争中の酷使の修理点検のため、一旦全機が使用停止され浜松工場、鷹取工場で全検を受けることになりました。

函館・室蘭線からも一時撤退し、昭和37年6月1日、13輌が改めて五稜郭区に配置となり、昭和47年まで使われました。

私が見たのは、再配置後のD52だったのでしょう。

確かに新潮社の『日本鉄道旅行歴史地図帳 1号 北海道』(今尾恵介・原武史・監修)によれば、昭和30年8月1日現在、北海道にはD52の配置は1台もありませんでした。

 

 


 

■参考
蒸気機関車データその2」(Just! Railway様)

<D52>
運転整備重量:136.89ton
機関車運転整備重量:85.13ton
最大動輪周出力:1660PS(1221kw)=12.1PS/ton
最大運転速度:85km/hr

<参考:DD51の機関車整備重量84ton,動輪周出力1540PS=18.3PS/ton,最大運転速度:95km/hr>

(写真・文/黒羽 君成)