汽車旅モノローグ~鉄道小話

鉄道の話題・今昔話を綴るブログ。旧「黒羽君成の鉄道小話(北海道コラム)」

鉄道全般・出来事

私が経験した災害<後編>平成24豪雪 - 分断された石狩・空知間交通網

2018/06/10

皆さんは時間あたりどのくらいの降雪量で 「豪雪」と定義されるとお考えでしょう?

日本が南北に長いせいでもあるのか、「豪雪の定義」は無いのです。

便宜上、北陸・東北・北海道のような多雪地帯では1m/24時間以上の降雪量があった場合を「豪雪」とよんでいるのだそうです。

戦後の豪雪を下記にお示しします。

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表1 戦後の「豪雪」の記録

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※「昭和38年1月豪雪(三八豪雪)」、昭38(‘63).1-2.
●四八豪雪(昭和48年豪雪)、昭48(‘73).11.-49.3.
●五二豪雪(昭和52年豪雪)、昭51(‘76).11.-52.2.
●五六豪雪(昭和56年豪雪)、昭55(‘80).12.-56.3.
●五九豪雪(昭和59年豪雪)、昭58(‘83).12.-59.3.
●六一豪雪(昭和61年豪雪)、昭60(‘80).12.-61.2.
※「平成18年豪雪(〇六豪雪、一八豪雪)」、平17(‘05).12.-18.2.
●平成23年豪雪(北陸豪雪、山陰豪雪)」、平22(‘10).12.-23.1.
※「平成24年豪雪(北海道豪雪、東北豪雪)」、平24(‘12). 1.-24.3.
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(※「 」は気象庁命名)

豪雪はこんなにあったんですね!

 

でも、何と言っても「豪雪」の名を全国区まで高らしめたのは「サンパチ豪雪」でしょう。

新潟県では、前年の12月から1月いっぱい連日降雪があり、日本海に来襲した寒気団は毎回強力で、特に1月23日に洋上にあった寒気は未曽有の物でありました。

 

鉄道関係で有名な話がいくつかあります。

下り急行・佐渡号は上野を1月24日、定刻の09:30に発車。
途中雪害のため、小出駅に27日まで滞留、85時間遅れで出発、さらに遅れがかさんで新潟に到着しました(調べ得た限りでは新潟到着の日時は不明でした)。

一方、上り急行・越路号は1月23日、新潟を定刻の16時05分に出発しましたが、結局、終着上野には106時間31分遅延の、1月28日8時29分の到着でした。

佐渡・越路編成は上越線経由の共通運用で特ロ1、並ロ1、ハ7の9輛組でした。

豪雪はよく見ると、3-7年ごとに来ています。

ちょっと前から有名になった、エルニーニョ&ラニーニャ現象がその周期で訪れるからなのですが、本文とは余り関係ないので省略しましょー。

ただコイツ等が強烈なときは一年中異常気象だらけになりますので ・・・<前編>56台風の年には・・・五六豪雪(福井市の最高積雪記録年)が「表」にちゃんとありました。

 

2012年の北海道の大雪

さて、長かった前ふりもこのくらいにして・・・

今年(2012年)の冬は寒気団がシーズンを通して猛威をふるいました。

ことに、1月16日には岩見沢の積雪量が182cmになり、42年ぶりの大雪と言われました・・・・?

42年前の1970豪雪は・・・?表を見てもありません?
ま、この続きは後から・・・

トニカク、1月16日は、途中、岩見沢測候所の降雪測定器がその負担に耐えかねて破損したほどで、
本当のところの降雪・積雪量は不明のままだそうです。

その後も容赦なく降り続き、今年3位までの月最大積雪量は歴代記録の中にあっても、42年前の1970年とワースト5を分け合っています。

<岩見沢市:歴代降雪量>

1位 208cm 2012年2月12日
2位 194cm 2012.年1月16日
3位 180cm 1970年(昭45年)3月22日
4位 174cm 2012年3月4日
5位 168cm 1970年2月28日

 

春も遅く、4月7日でさえ116cmの積雪量がありました。

またシーズン降雪量((前年の初雪から翌年・・・記録などが記載される年号、の最終降雪日まで)は、1位が1970年の1112cm、2位が今年で1040cm、10m越えは5度目です。因みに観測開始から60年間の平均は730cm程度です。

家の倒壊もありました。自衛隊の救援もありました。

 

実は1970年にシーズン降雪量が歴代1位の街がほかにもありました。後志の倶知安町で、2019cmと2位の1617cm(昭和52年)とは大きく水をあけました。

確かに局地的豪雪は1970年にはあったようです(この年度の国内2位の新潟県十日町市のシーズン降雪量は約11m)。

たとえば・・・<前編>でお話させていただいた、私の実家は昭和44(1969)年に「泥炭地」の中に引っ越したばかりでしたが、1970.3.18,前日の夜半から猛吹雪で休校になりました。除雪車が来たのが、10時過ぎ、バスが走り始めたのは昼過ぎでした。

雪が多い年かどうかは忘れてしまいましたが、3月まで荒れ模様だったところを見ると、少なくとも札幌地方でも、1970年はただでは済まなかったシーズンではなかったかと思います。

 

すいません。今年の話でしたね。

 

私は、手稲から美唄まで(68km)JR通勤をしております。今冬は、列車が不通になって、職場を3回休ませていただきました。

うち1回は、早朝6:30頃、職場から電話が掛かってきて、「今日は無理だからくるな」とのお達し。

札幌と岩見沢のほぼ中間に、石狩川の支流の中でも一、二の夕張川鉄橋が架かっていますが、ここが特に石狩湾低気圧の風の通り道になるらしく、この付近の冬場の交通障害と言えば、大抵 幌向(岩見沢から駅2ツ札幌寄り)ー岩見沢間で、中央自動車道、国道12号、JRの順に止まります。

石狩湾に北風が吹きこんだときのみ、雪害が、石狩・後志になりますが、少しでも斜めから(北西、西北西、西風)が入ってくると少しのずれはありますが、石狩・空知間の交通路が分断されたうえ、どちらもエリア内の交通機関がストップしてしまいます。

石狩と空知の境は先の幌向とさらに駅一つ札幌側の豊幌との間にあります。

そんな、雪害状況を通勤途上の様子からいくつか拾ってみました。

・・・(あ~ァ、やっと本番か)・・・

 

百人のってもダイジョーブな?ホームの上屋

下の<写真1,2>は岩見沢駅のホーム上屋。雪の量にご注目ください。

<写真1>はホーム上の人を身長170cmとするとホーム上屋の積雪は200-220cm位のようです。

新雪で1平方m当たり1m積もると0.5tonになるそうです。

2m積もって時間が(ケースバイケースだそうですが)経てば最下層では、圧縮されて厚さ30-50cmx1平方mで1tonになるとも言われています。

今シーズンは、みな、屋根の雪下ろしに必死でした。確かにそれだけ重くなるのであれば・・・

 

20120610_1
<写真1>
撮影日:平成24(2012).2.16.
ホーム上の人の背丈より、上屋の積雪の方が明らかに高く積もっています。

 

20120610_2
<写真2>
撮影日:平成24(2012).4.6.
撮影地:<写真1,2>とも岩見沢駅3/4番ホームから6/7番ホームの上屋をみる。
よくまー、ひとシーズンもちました。雪も完全に無くなりメデタシめでたし。

 

岩見沢駅のジョルダン車

下の写真は、同じく岩見沢駅の構内専用除雪車です。車体前面に両翼をもつジョルダン車というシロモノです。

翼で雪を蹴散らすのですが、翼自体には負荷をあまりかけられないものですから、降り始めの積雪量が少ない時が勝負!!の除雪車です。

毎シーズンのように出動していたのでしょうけれど、私の勤務地は帯広以外は札幌以南・以西でしたので、ひょっとしてこいつを見たのは、大学生以来・・・?

また、別な日、8:00頃から降りが強くなる予想とのことで、早起きして、7:15頃に岩見沢に着いた時の話ですが、

その日の岩見沢駅では、ナント!

駅員さん、運転掛さん、保線区さん・・・総勢50名位?が助役さんのホイッスルで一斉に除雪器具を手に手にホームから飛び降り、構内雪かきを始めました。この姿にはさすがにびっくり。

除雪車
<写真3>岩見沢駅構内専用除雪車”ジョルダン車”
撮影日:平成23(2011).12.9.
撮影地:岩見沢駅6/7番ホームから北側の側線群を 除雪している同車。

この後、暫くして、あのしつこい冬将軍がやってくるなんて誰も考えていませんでした。

 

スーパーカムイの運転士さんホワイト・アウトしたか?

ホワイト・アウト現象には程遠いのですが、スーパー・カムイ17号の車窓から峰延付近の灌木群生を撮影。

札幌・岩見沢間は定時運転。岩見沢から突如の最徐行運転。
岩見沢・美唄間は時刻表表示の倍かかって到着 =20分/16.8km=50.4km/hrで走ったことになります。

外の吹雪を見ると、林などの景色はこんな風に見えます。

これでいつもの120-130km/hrで走られたり・・・等と考えると、かえってトリハダがたちます。

20120610_4
<写真4>暴風雪のため?岩見沢から突如最徐行運転。
撮影日:平成24(2012).2.10.
撮影地:岩見沢・峰延間、下りSカムイの車窓から撮影

 

ローカル列車が悪天候の中、岩見沢に定時到着

旭川発の各駅停車が(2234レ、711系3連)17:52、見事!岩見沢に定時到着(所要:1時間42分)。

信号・ポイントシステムのトラブルが、3月だったので、起こりづらかったのかもしれませんが、当列車の定時運転は運転士さんの技量によるところが大きいと思いました。

強風で写メも持って行かれそうな一日でした。写っているのは、最後尾のクハ。

20120610_5
<写真5>
撮影日:平成24(2012).3.19.
撮影地:岩見沢駅(3番ホーム停車中)。

3月に入ってもこんな日が幾日かありました。

岩見沢までですと、1時間に特急が最低1本、快速・各停が2-3本入りますが、岩見沢以北は特急以外の種別が激減します。

なので夕方、美唄から手稲に帰るときは、美唄から北側の駅の情報を、美唄駅でジ~~ッときいておりまして、

特急だけ動いている場合もあれば、ローカルのみ動いている日もあり、その時の状況に応じて、帰路につきました。

 

JR美唄駅の惨状

では、最後に、美唄駅の惨劇をご覧いただき今回のまとめとさせていただきます。

四葉の写真が出てまいります。

撮影時刻はまちまちで陰影・薄暮の様子など少しずつ違って分かりづらい所があるかもしれません。

始めの2枚は西口(国道側出入り口)、後の2枚は東口で、以前、三井・三菱の炭鉱群へと続く出発点となっていたところであります。

 

20120610_6
<写真6>
撮影地:美唄駅西口(国道側)
撮影日:平成24(2012).1.30.16:09頃。

この時点で市内の雪捨て場が満杯で、駅前広場の雪も、端に寄せるしか手はなかったのでしょうけれど、積んだ雪が、バスの屋根より高くなっているのがおわかりでしょうか?

 

20120610_7
<写真7>
撮影地:美唄駅西口(国道側)
撮影日:平成24(2012).4.6.16:04頃。

完全な定点撮影ではありませんが、<写真6>の融雪期の写真です。奥の並びの凸凹のビルと周囲の雪の様子を比べて頂くとよいかもしれません。

 

20120610_8
<写真8>
撮影地:美唄駅東口
撮影日:平成24(2012).2.2.9:09頃。

西口と駅を挟んだ反対側の東口の状態です。やはり、雪捨て場が無く、駅前広場の雪は、乗用車が1台通れるほどだけあけるようにして(ロータリー式で一方通行)、雪は周りに積み放題積んでいました。積雪は、タクシーより高くなっています。中央の半月型の白い屋根は寺院なのですが、御記憶下さい。

 

20120610_9
<写真9>
撮影地:美唄駅東口
撮影日:平成24(2012).4.6.16:01頃。

<写真7>と同じ日です。
写真ほぼ中央に白い建築物群にかこまれた黒く抜けた部分があるのがお分かり頂けるかと思いますが、

<写真8>の半月型の屋根の雪が解けて建材の色が見えているようです。
タクシーの駐車スペースも、もちろん確保されています。

 

最後に

24豪雪・・・終わってみれば・・・23年のシーズンも小雪ではありませんでしたが、23年の倍の1748本の運休で、2001年以降最悪の記録とか・・・過去にJR北海道は、大雪時、立ち往生する列車のためにますますダイヤが混乱するため、天候次第で最大70%の間引き運転をすると発表したことがあります(2003.11)。

しかし、最近の札幌圏の駅を見ると、退避線のない駅ばかりできており、遅延した各駅停車の列車のあとを、追い越しが出来ない快速列車がノロノロとついていくといった場面を、今冬はとりわけ沢山見聞きしたように思います。

やはり、間引きすることもある程度は必要と思いますが、線増(駅間線増、駅退避線増設)、信号システムの改良(駅間に1個列車しかはいっていません)・・・閉塞信号の間合いを詰めて、駅間距離が長い所は続行運転を可能にするですとか、苗穂のあまり使われていない南側の留置線に列車を待機させておいて、ある列車が札幌駅の到着があまりにも遅すぎた場合、その待機列車を使って、遅延した列車を待たず、札幌で列車の連続性を分離して、遅れている列車のスジで、定刻に札幌から出発させるとか・・・

ま、言うはやすしですが・・・

再度申しますが、私は鉄道復権派です。

上のようなモンクはJR北海道さんに対して失礼であることは重々承知しております。ただ単なる誹謗中傷ではなく、激励のエールとしてとって頂ければ望外であります。

今度こそホントに最後の最後です。

JR北海道さんは財政的に恵まれているわけではありません。しかし、札幌発北方行き特急が岩見沢に到着するまでの間に30分以上遅延した場合(時刻表上は23-29分)特急料金をとらず、また美唄駅においては、先行するはずのローカル列車が遅れ(既定の2時間に遠く及ばなくとも)、特急列車が先着した場合、上りであれば、岩見沢まで(美唄・岩見沢間16.6km)、
下りであれば滝川まで(滝川まで26.1km)乗車券・定期券のみでの乗車サービスをおこなっておりました。

「雪国ではどこでもやってるよ」といった行為なのかもしれませんが、今冬のように、ほぼ連日ともなりますと多大な損失となるでしょう。

自社のフトコロも大変ですのに、シーズンを通して「乗客に迷惑をかけた遅延特急の料金は徴収せず」を徹底したことは、特筆大書に値するプロの良心と思いました。

 

<後編>完

 

文・表・写真 / 黒羽 君成